ヤメ検弁護士・佐方貞人の検事時代のエピソード中編集。
『樹を見る』・・・県警上層部に渦巻く嫉妬が、連続放火事件の真相を歪める。
『罪を押す』・・・出所したばかりの累犯者が起こした窃盗事件の真実を抉る。
『恩を返す』・・・同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、真っ向から対峙する。
『拳を握る』・・・東京地検特捜部を舞台に、法と信義の狭間でもがく。
『本懐を知る』・・・横領弁護士の汚名をきてまで、約束を守り抜いて死んだ男の真情を描く。
以上5編の構成だが、いずれも佐方をドーンと前面に押し出すのではなく、第三者視点で語らせることでその人となりがクローズアップされていく手法はお見事。
このうち、『恩を返す』『本懐を知る』がお気に入り。
柚月氏は本書執筆中に東日本大震災にてご両親を亡くされたと知り(解説より)、佐方が父からは
「形のないものをもらいました」
と語ったのは、著者の自己が投影されたセリフだと思い心に響いた。
ところで、柚月氏は「女横山秀夫」との呼び声も高いらしいが、私自身、そもそも横山作品を読んでいないので、比べようもなく困った(苦笑)
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