にゃむこのメモ帳

読了本の感想を中心に、その他もろもろ。たまには猫のミルクさんも登場するよ。

カテゴリ: > 作家や行


ヤメ検弁護士・佐方貞人の検事時代のエピソード中編集。

『樹を見る』・・・県警上層部に渦巻く嫉妬が、連続放火事件の真相を歪める。

『罪を押す』・・・出所したばかりの累犯者が起こした窃盗事件の真実を抉る。

『恩を返す』・・・同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、真っ向から対峙する。

『拳を握る』・・・東京地検特捜部を舞台に、法と信義の狭間でもがく。

『本懐を知る』・・・横領弁護士の汚名をきてまで、約束を守り抜いて死んだ男の真情を描く。

以上5編の構成だが、いずれも佐方をドーンと前面に押し出すのではなく、第三者視点で語らせることでその人となりがクローズアップされていく手法はお見事。

このうち、『恩を返す』『本懐を知る』がお気に入り。


柚月氏は本書執筆中に東日本大震災にてご両親を亡くされたと知り(解説より)、佐方が父からは
「形のないものをもらいました」
と語ったのは、著者の自己が投影されたセリフだと思い心に響いた。

ところで、柚月氏は「女横山秀夫」との呼び声も高いらしいが、私自身、そもそも横山作品を読んでいないので、比べようもなく困った(苦笑)



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大正4年12月9日、日本獣害史上最大の惨事である三毛別羆事件を基にしたドキュメンタリータッチ小説。

どうしよう。
各所で拝読できる、本書をレビューされてる方々と違い、まったく恐怖感を抱かなかったのですが…。
全編通して文章があまりに淡々とし過ぎているからでしょうか。

羆に襲われるかもしれない恐怖感も、羆に襲われた現場に直面した絶望感も、手古摺っていた羆を遂に仕留めた達成感もありませんでした…。

読後に「復習」したWikipediaの「三毛別羆事件」の項の方がより臨場感に溢れていました。

そもそも、羆云々よりも当時の開拓民の過酷さの方が印象的でした。



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公判三日目、佐方の最終弁論あたりからは息つく間もなく一気読みでした。

「最後の証人」が二段構えで来たのには唸らされました。

法廷内の全員には判っている、けれど読者にのみ伏せられたままの被告人。
そのミスリードさえ心地よいです。

子を持つ親として、最愛の子を亡くしてしまった夫婦の心痛ややるせなさには同情を禁じえず、その原因となった事故を隠蔽した警察の対応、及び犯人に激しい憤りを覚えました。

しかし、佐方の弁護により、本事件に深く関わる事故の再調査が始まることがせめてもの救いだったと思います。


前著デビュー作『臨床真理』よりは読み応えがあり、また本作主人公、ヤメ検弁護士・佐方貞人はシリーズ化されているので、次の作品も楽しみです。



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柚月裕子作品、初読みです。

臨床心理士・美帆が結構猪突猛進型で危なっかしいのだけど、何だか応援してしまいますね。
スピード感があって読みやすいです。

美帆の猪突猛進ぶりに対して同級生の刑事・栗原の冷静さが程よいコントラストで、物語のバランスを保っています。

真犯人が「社会的弱者にしか欲情しない」といいつつ、美帆に口淫を強要したのは何故なのでしょう。
美帆も真犯人の欲情を受け入れず、時間稼ぎに会話を引き伸ばすとか、他に考えうる方法はなかったのでしょうか。


本作のようなことが現実にないとは言えず、まだまだ世間的に認知度が低いと思われる、障害者の抱える性の問題は、今後社会全体が真剣に考えていかなきゃならない問題の一つかも知れないですね。



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・青森県のとある集落でのおぞましい因習
・外界への道路を落雪で閉ざされた雪山の駆け込み寺
・そこでの連続殺人事件
これらの条件が揃っていれば、すなわち王道のクローズドサークルもの。

ところが、主人公はじめ各登場人物の性格、その他場面設定等に凝りすぎていて、それらを理解しながら進むために、素直にストーリーを楽しめないのです。

何というか、読者の意表を突こうと奇をてらい過ぎて裏目に出てしまった感じがして残念です。

(著者名含む)本書名それ自体にある仕掛けが施されていて、そこは素直に「そう来たか!」と、目からウロコでした。



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