読み始めたのはGW明け。
連休ボケした頭にガツンとくる、’70~’80年代の劇画調の骨太なハードボイルドを読みたくて。

当時は「GORO」という総合男性誌に連載していました。


□■□■□■□■□<以下、ネタバレあり>□■□■□■□■□



売り出し中の若手女性アイドル・草川マキと大物政治家・小倉武夫の大スキャンダルを
スクープ撮した人気女性カメラマン・広瀬未来が、写真を奪いに来た正体不明の二人組の
に性的暴行されたショックから自殺。

それを知った婚約者で本作の主人公、元アマチュアボクサーでTVディレクター・暮海猛夫の
復讐劇が始まる。



組織に殺された恋人の復讐のため、暮海は同じく殺された草川マキの姉・夏子の協力を得て、
競馬の障害レースで八百長を仕込み400万円を1億円に増やす。
その金を持ってアメリカに渡り、自分の復讐劇を生中継してもらおうというのだ。

この巻では暮海と夏子の出会い、競馬の八百長仕込み、偽造パスポート等渡米への準備、
組織の追っ手を始末(夏子が犠牲)、暮海の乗船までを収録。

なお、夏子の職業は、現在で言えば「ソープランドのソープ嬢」だが、表現は当時のままで
「トルコ風呂のトルコ嬢」となっているところも時代を感じさせる。



暮海は復讐の秘策を胸に渡米、まずはニューヨークへ。
しかしそこは絶望と恐怖と汚物の都市。
ここに集う人間たちを繋ぐのは、友情でもビジネスでも血のつながりでもなく、セックスと
マネーと25ドルで手に入る拳銃
、という退廃さ。

暮海はハリウッドの超大物映画プロデューサー、A・ギラムに接触を試みる。

’70年代の荒廃したアメリカの雰囲気が色濃く漂っている。



ギラムとの接触に成功した暮海は、己の復讐計画を映像化してもらうべく、これまでの
いきさつを語り始める。
これが日本編のおさらい的で哀愁が漂う。

一方、暮海の抹殺のため「霧の底」と呼ばれるペンタゴン(国防総省)からの刺客、
ハイパーヒットマン・サイキックが彼の足取りを追う。



ギラムの協力を取り付け、復讐の一歩を踏み出す暮海の前に、日本の巨大組織と繋がる
ペンタゴンはDIAの刺客、サイキックが立ち塞がる。

暮海は「牝犬(ビッチ)バイカー」のエイダや「ホットタブ」のドウリィーに助けられ包囲網を
突破するが、ドウリィーは犠牲となってしまった。

暮海と男女の関係になった女が次々と命を落とす展開なのは容赦ない。



メキシコ系アメリカ人のサラ、元五輪体操米国代表の黒人女性ブラック・ローズ、覚醒剤中毒者
のゼルマ、そしてロス市警SWATのリリィ。
彼女たちもまた暮海の前に姿を現しては束の間彼を愛し、そして命を落として暮海と別れる。

愛して失った女の数だけ、暮海の心は愛に餓える。
まさに、アイウエオ・ボーイだ。


ギラムの遺言「ベガスのドロシィのところへ行け」を胸に刻み逃避行を続ける暮海。
何とかドロシィの元に辿り着いたものの、前回の直接対決で左目を失ったDIAのサイキックの
執拗な追跡で追い詰められた。
銃撃戦の末被弾した暮海は無事なのか?

なお、本巻で池上遼一作画分は終了。
小池一夫×池上遼一はゴールデンコンビだと思う。


作画を松久鷹人に代えての最終巻。

当初は婚約者を殺された復讐を果たすのを目的に渡米した暮海だったが、アメリカ編は
何故かDIAの刺客サイキックとの追いかけっこが続いていた。
最後は一騎討ちでサイキックを倒したが、尻切れトンボ感は否めない。

急に作画が変わってしまったのも残念。